SOLVE/RESOLVEは、最後の分子モデルの構築まで、人による判断を省いて全自動化されています。このため、ある意味無駄な計算が多く(プログラムがいろいろと試みるということ)計算にずいぶん時間がかかり、一度走らせると終わるまで平気で数時間から1日かかります。
以前から、データ収集後、分子モデルの構築までに行われてい たステップは次のとおりです。
ここで紹介した手法では、以下のように行っています。
SOLVE/RESOLVEでは、この4ステップを2つのプログラム で自動化しており、少し細かく見ると
さらに、AutoSHARPですが、
さて、どの方法が優れているかの比較ですが、 1のステップは、MAD、SAD、SIR、MIRとも直接法のSHELXかSnB を使えば十分だと思います。SOLVEは、CrやCuのNative結晶のSAD のデータでは、重原子の位置を正しく見つけてくれませんでし た。SeMetのような重原子データではSOLVEもうまく行くのでし ょう。
2のステップでは、SHARPとMLPHAREはほとんど同じ結果を与え ます。SOLVEは経験不足のためわかりません。
3のステップはSOLOMONよりDMのほうが少しいいみたいです。RESOLVE もDMと同じくらい良い結果を与えます。
4のステップは、2Aを越える高分解能ならばARP/WARPですが 、2.6A前後の低分解能ではRESOLVEが優れています。どちらの プログラムもREFMAC5とペアーを組んで、精密化も同時に行っ てくれます。特に高分解能でのARP/WARPは強力で、リゾチー ムのCuの1.8Aのデータでは、得られたモデルをこれ以上精密化 する必要はほとんどありませんでした。なお、2.5A程度のいわ ゆる「普通」のタンパク質では、RESOLVEを使うべきだと思い ます。
ただ、RESOLVEは、計算時間が掛かるみたいで、Crの2.2Aのリゾチームのモデル構築でも7時間以上は優にかかります。ノートPCには、いささか荷が重いようです。(ファンがずっと回りっぱなし)
ARP/WARPなら、Cuの1.8Aのデータで1時間位で129残基中127 残基を正確に作ってくれます。
分子モデルの自動構築プログラムのおかげで、少し前のように グラフィックスディスプレーの前に何日も座って、分子モデル を組み立てる/修正することから、ほぼ開放されました。
運が良ければ、MAD/SADでデータ処理を始めた日の夕方か(ARP /WARP)、遅くとも次の日の朝(RESOLVE)には、構造が得られま す。
結論として、
ただし、精度の良いデータを測定していないと、上のどちらの 方法も失敗しますので、それだけは注意して下さい。